家庭裁判所による養育費・婚姻費用算定表につき、改定された算定表(令和元年版)が公表されました。(2019年12月23日)
養育費の一括払いについて
養育費については、定期的な支払(毎月払い)が一般的ですが、支払期間中における総額を一括にて支払う、あるいは数回に分割して支払う旨を希望されることもあるかと思います。もちろん、そのような合意も認められるものではありますが、一括支払いの場合、「以後養育費についていかなる請求もしない」との条項が定められている場合であっても、事情の変更が生じた際には増額の請求も可能であり、また、子からの扶養請求も妨げられるものではないと考えられています。一括払いを受けた後、その養育費を費消してしまった場合においても、子から扶養料の請求につき、同様です。よって、養育費の一括払いについては、当事者が問題点などを十分に認識した上で条項を定めることはもちろん、養育費の費消を避けるために信託銀行を利用することも検討に値します。なお、養育費を一括にて支払う旨の協議書においては、1か月の金額の記載、および期間の特定について、必ず記載されることをお勧めします。
第 条 甲は乙に対し、長男××(平成 年 月 日生)の平成 年 月から同人が満18歳に達する日の属する月までの養育費として、金 万円(1か月 万円)を支払うこととし、これを平成 年 月 日限り、乙が指定する金融機関の預金口座に振込みにて支払うものとする。
第 条 甲及び乙は、将来、事情変更があった場合、誠実に養育費の増減額の協議をするものとする。
養育費の強制執行について
離婚給付等契約公正証書については、強制執行認諾の条項が盛り込まれるのが一般的であり、養育費など、扶養義務に基づく定期金債権については、その一部が不履行になった場合、その後は期限が到来していない債権についても強制執行が可能となります。また、差押禁止債権の範囲も通常の債権が4分の3であるのに対し、2分の1とされています。ところが、「解決金」「和解金」名目となっている場合、この特例が適用されない可能性があります。
(参考)
民事執行法
(扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例)
第百五十一条の二 債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、第三十条第一項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。
一 民法第七百五十二条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
二 民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
三 民法第七百六十六条 (同法第七百四十九条 、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
四 民法第八百七十七条 から第八百八十条 までの規定による扶養の義務
2 前項の規定により開始する債権執行においては、各定期金債権について、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権のみを差し押さえることができる。
(差押禁止債権)
第百五十二条 次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
2 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
3 債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。