離婚協議書の主な記載事項
・財産分与(過去の婚姻費用の清算金、離婚後の生活保障たる扶養的財産分与含む)
・慰謝料
・子供の親権者(親権者と監護者が違う場合は監護者についても記載します)
・子供の養育費
・面接交渉権
離婚成立後、相手方が取り決めを守らなかった場合、離婚協議書があれば、これを証拠として相手に取り決めを守らせることが可能です。
ただし、場合によっては、改めて裁判を起こす必要もあります。そこで、離婚協議書を、強制執行認諾約款付きの公正証書にしておくことをお勧めします。その場合、裁判を起こすことなく強制執行の手続をとることも可能となり、相手方の給与や預貯金などを差し押さえることもできます。
※公正証書(離婚給付等契約公正証書)については、通常は以下の条項から成り立っています。
・離婚の合意
・親権者と監護権者の定め
・子供の養育費
・子供との面接交渉
・慰謝料
・財産分与
・住所変更等の通知義務
・清算条項
・強制執行認諾
姓と戸籍について
離婚した場合、戸籍の筆頭者に戸籍の変化はありません。夫が筆頭者の場合、夫の戸籍はそのままで、妻が戸籍から抜けることになります。
一方、筆頭者でない者については、元の戸籍(結婚前に属していた親の戸籍)に戻るか、もしくは新しい戸籍をつくることになります。前者の場合、旧姓に戻ることになります。後者の場合は、旧姓で新たな戸籍をつくるか、あるいは結婚時の姓で新たな戸籍をつくるか、いずれかを選ぶことになります。
なお、原則は旧姓に戻ることが規定されており、結婚時の姓を継続して使用したい場合は、「離婚の際に称していた氏を称する届」を離婚の日から3か月以内に提出しなければなりません。
さて、少々複雑なのが子供の姓についてです。例えば、筆頭者が夫であり、夫が子供と暮らす場合、子供は夫の姓を名乗り、戸籍も変わりません。
問題は、筆頭者でない者が妻であり、妻と子供が暮らすことになった場合です。具体的には以下のケースが想定されます。
1 妻が親の戸籍に入り、旧姓を使用する場合
→子供と一緒に暮らしても、子供は夫の姓を名乗り、夫の戸籍に属したままです。
2 妻が新しい戸籍をつくった上、旧姓を使用する場合
→子供と一緒に暮らしても、子供とは戸籍も姓も別になります。
3 妻が新しい戸籍をつくり、結婚時の姓を継続して使用する場合
→子供と同じ姓ではあるが、戸籍は別になります。
つまり、筆頭者でない者は、子供を引き取ることになっても、別戸籍になってしまうのです。離婚時に親権者として届け出ていても同様です。
もちろん、一緒に暮らしていて、子供が夫の戸籍に属したままであっても、法的には問題はありません。ただ、実生活においては、なにかと不便が生じることもあります。
そこで、筆頭者でない者が、子供を同じ戸籍に入れたい場合は、新たな手続が必要となります。まず、筆頭者でない者は、新しい戸籍をつくらなければなりません(元の戸籍に戻った場合は、子供と同じ戸籍には入れません)。その上で「子の氏の変更許可申立書」を提出し、認められた場合には「許可審判書」を添えて、子供の戸籍を自分の戸籍へと移す「入籍届」を提出します。
離婚後に受けることのできる助成制度各種
離婚した後は、言うまでもなくそれまでの経済状態とは大きく変わります。特に子供を養育している場合、母子家庭においては経済的に厳しい立場に置かれる可能性もあります。そこで活用したいのが公的な福祉制度です。詳細は自治体により異なりますが、以下、主なものを挙げていきます。
■児童扶養手当(母親のみに支給)
支給額=全額支給で子1人の場合、月額約4万円 子2人目5千円加算、子3人目以降3千円加算
※18歳に達する日以後、最初の3月1日までの間にある子供(一定の障害のある児童については20歳未満)を扶養している場合に支給。所得制限があります。
■児童手当(母・父親のいずれか離婚の有無に関らず支給)
支給額=子2人まで1人につき月額5千円 3人目以降1人につき月額1万円
※小学校6年生までの児童を養育している場合に支給。所得制限があります。
※平成19年4月より改正され、3歳未満の子については、一律1人月額1万円となりました。
※児童手当は2010年度より子ども手当に移行されました。
※2012年度より、再度児童手当の名称になりました。
支給額
0歳~3歳未満 月15000円
3歳~小学校修了まで 月10000円(第1子・第2子)・月15000円(第3子以降)
中学生 月10000円
所得制限以上 月5000円(当分の間の特例給付)
■ひとり親家庭等医療費助成(母・父親のいずれかに支給)
支給額=医療費の自己負担分の助成
※18歳に達する日以後、最初の3月31日までの間にある子供(一定の障害のある児童については20歳未満)を扶養している場合に支給。所得制限があります。
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その他の公的支援制度(自治体によって実施していない制度もあります)
・所得税・住民税の軽減
・水道料金の減免
・公営住宅の優先入居
・就学援助制度
・児童育成手当
・JR通勤定期乗車券の割引制度
児童扶養手当、父子家庭も対象に
低所得の父子家庭が増加していることから、これまでは低所得の母子家庭のみ対象とされていた児童扶養手当について、法改正により父子家庭も支給の対象とすることが決定しました。支給額は児童(18歳以下)ひとりにつき月9850円~41720円(所得によってかわります)、2人目は5千円、3人目以降は3千円がそれぞれ上乗せされます。
改正法が施行されるのは22年8月1日から。およそ10万世帯の父子家庭が対象になるとみられています。(22.5.26)
離婚時の年金分割制度について
平成19年度4月1日以降、離婚された場合に、年金分割制度が適用されます。ただし、この年金分割制度については、誤解されている部分もかなりあるようです。けっして「夫の年金の半分がもらえる」わけではありません。
平均的なサラリーマン夫婦(夫の年収600万円・妻は専業主婦・婚姻期間30年)を想定した場合、最大分割割合の2分の1の年金が支給されることとなっても、額は毎月5万円程度になるかと思います。年金分割制度に過度な経済的期待を持つのは早計です。
なお、年金分割について、按分割合の合意を話し合うには、夫婦の標準報酬の確認を要します。社会保険庁へ情報提供の請求を行って下さい。
情報提供の内容
・分割の対象となる期間
・分割の対象となる期間に係る離婚当事者それぞれの保険料納付記録
・按分割合の範囲
※平成20年4月1日より3号分割制度が実施されています。国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、平成20年4月1日以降における配偶者(第2号被保険者)の厚生年金の標準報酬を2分の1ずつ、当事者間で分割することができるものです。上記の合意分割制度とは異なるものです。詳細はお問合せ下さい。
離婚後300日以内に生まれた子の出生届について
婚姻の解消または取消し後300日以内に生まれた子については、民法第772条において「婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」と規定されています。
ですが、現実には、後婚の夫との間の子供を300日以内に出産するケースもあります。そこで、平成19年5月21日から、「懐胎時期に関する証明書」が添付されている場合には、婚姻の解消または取消し後300日以内に生まれた子について、当該証明書の記載から推定される懐胎の時期の最も早い日が婚姻の解消または取消しの日より後の日である場合に限り、婚姻の解消または取消し後に懐胎したと認められ、民法第772条の推定が及ばないものとして、母の嫡出でない子または後婚の夫を父とする嫡出子として出生届を出すことができるようになりました。
なお、「懐胎時期に関する証明書」とは、出生した子およびその母を特定する事項のほか、推定される懐胎の時期およびその時期を算出した根拠について診断を行った医師が記載した書面のことをいいます。「懐胎時期に関する証明書」が添付されない場合には、従前通り、民法772条の推定が及ぶものとして取り扱われます。
※補足(2008.1.22)
先の規定は、あくまでも離婚後に妊娠したことが前提となっています。離婚成立前に再婚予定の男性の胎児を妊娠した場合はあてはまりません。
先頃、新聞報道によると、民法772条「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する」により、無戸籍となった子供が、2007年12月末現在で道府県庁所在地と政令指定都市の計50市と東京23区に、少なくとも127人いることがわかりました。
離婚後妊娠では、再婚後の男性の子での出生届が認められているため、現状では無戸籍児は離婚前妊娠のケースだと思われます。規定の早急な見直しが求められています。
養育費の一括払いについて
養育費については、定期的な支払(毎月払い)が一般的ですが、支払期間中における総額を一括にて支払う、あるいは数回に分割して支払う旨を希望されることもあるかと思います。もちろん、そのような合意も認められるものではありますが、一括支払いの場合、「以後養育費についていかなる請求もしない」との条項が定められている場合であっても、事情の変更が生じた際には増額の請求も可能であり、また、子からの扶養請求も妨げられるものではないと考えられています。一括払いを受けた後、その養育費を費消してしまった場合においても、子から扶養料の請求につき、同様です。よって、養育費の一括払いについては、当事者が問題点などを十分に認識した上で条項を定めることはもちろん、養育費の費消を避けるために信託銀行を利用することも検討に値します。なお、養育費を一括にて支払う旨の協議書においては、1か月の金額の記載、および期間の特定について、必ず記載されることをお勧めします。
第 条 甲は乙に対し、長男××(平成 年 月 日生)の平成 年 月から同人が満18歳に達する日の属する月までの養育費として、金 万円(1か月 万円)を支払うこととし、これを平成 年 月 日限り、乙が指定する金融機関の預金口座に振込みにて支払うものとする。
第 条 甲及び乙は、将来、事情変更があった場合、誠実に養育費の増減額の協議をするものとする。
離婚協議書
夫 ××××(以下、甲という)と妻 ××××(以下、乙という)は、離婚について協議した結果、以下の通り合意した。
第一条 甲と乙は、合意の上、協議離婚する。離婚届は乙(甲)が速やかに提出する。
第二条 甲と乙間の未成年者の子供 ××××(平成×年×月×日生、以下、丙という)の親権者は乙とし、今後乙において監護養育する。
第三条 甲は、丙の養育費として、以下の通り支払うこととする。
一 支払い開始は、平成×年×月×日からとする。
二 支払い方法は、毎前月末日までに甲による乙が指定する丙名義の預金口座への振込みとする。
三 支払期間及び額は、平成×年×月×日から平成×年×月×日の丙の大学卒業時まで、毎月×万円とする。丙が------------------------------------------------------------------------------------------場合も、卒業する日の属する月又は丙が成人に達する日の属する月のいずれか遅い時期まで、毎月×万円とする。また、-----------------------------------------------------------------------場合、卒業する日の属する月又は丙が成人に達する日の属する月のいずれか遅い時期まで、毎月×万円とする。
(この他、事情に応じてより細かく定めます)
四 -----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------。
五 -----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------。
2 丙の大学、短期大学、専修学校その他各種学校等の入学時に要する費用について、------------------------------------------負担するものとする。---------------------------------------------------------------------------------。その他丙において入院等の特別な事情が発生した場合、甲と乙は、互いに誠実に協議して分担額を定めるものとする。
3 甲又は乙から、物価又は甲、乙の各生活状況等の変化を理由に第1項の定めを変更したい旨申し出があった場合、甲及び乙は互いに誠実に協議しなければならない。
第四条 甲の乙に対する財産分与は、次の通りとする。
一 甲は乙に対し、金×万円を---------------------------------------------にて支払うものとする。
二 甲は乙に対し、下記不動産を譲渡する。なお、登記手続きに要する費用は甲の負担とする。
土地(不動産登記簿より転載)
建物(不動産登記簿より転載)
(この他、生命保険、学資保険などの取り決めも検討します)
第五条 甲は乙に対し、離婚後の生活保障たる扶養的財産分与として、----------------------------------にて支払うものとする。
第六条 甲において養育費又は第四条若しくは第五条における支払いを遅滞したときは、甲は遅滞の日から支払い済みまで年××パーセントによる遅延損害金を付加して支払うものとする。
第七条 甲及び乙は、住所、居所、連絡先を変更したときは、遅滞なく相手方にこれを通知するものとする。
第八条 乙は甲に対し、甲が一箇月に一回程度、丙と面会交流することを容認する。日時、場所、方法等は、丙の福祉を害することのないよう配慮し、甲乙協議の上決定する。
第九条 離婚に伴う年金分割につき、甲を第1号改定者、乙を第2号改定者として、甲と乙は厚生労働大臣に対し、-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------とする旨合意する。
第十条 甲と乙は、本協議書に基づき直ちに強制執行承諾の条項を入れた公正証書を作成することに合意する。なお、公正証書作成に要する費用は甲の負担とする。
第十一条 甲と乙は、本件離婚に関し、以上をもって円満に解決したことを確認し、------------------------------------------------------------------------------------------------甲乙互いに請求しないものとする。
以上の合意の成立を証するため、本書二通を作成し、甲乙が各自署名押印の上、各自一通を所持する。
平成 年 月 日
甲
住所
氏名 印
乙
住所
氏名 印